
行政書士:寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
資格:行政書士、土地家屋調査士。
主な取扱い専門分野:銀行預金などの遺産相続手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続手続きの代行業務を全国対応で行ってます。
行政書士のプロフィールはこちら
仮払い制度で口座凍結中に相続の預貯金を引き出すには、
大きく分けて2通りの方法があります。
1つは、裁判所の手続きをしないで行う方法と、
もう1つは、家庭裁判所の手続きによって行う方法です。
ただ、それぞれメリットとデメリットがありますので、
よく考えた上で仮払い制度を利用することが必要です。
そこで、このページでは、亡くなった方の預貯金を口座凍結中に、
裁判所の手続きをしないで引き出す方法と、
家庭裁判所の手続きによって引き出す方法をそれぞれ解説致します。
仮払い制度で口座凍結中に引き出す方法(裁判手続きをしない方法)
仮払い制度で口座凍結中に相続の預貯金を引き出すには、
大まかな流れとして次の①~③の流れになります。
①まず、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本等と、
相続人全員の戸籍謄本等を取得してそろえます。
もし、亡くなった方が、相続人から見て兄弟姉妹や、
おじおばにあたる場合には、
亡くなった方の両親の出生から死亡までの戸籍謄本等も必要です。
上記の戸籍謄本等については、
後日の相続手続きにそのまま必要となる書類になるため、
相続手続きに必要な戸籍謄本等とも言われています。
なぜ戸籍が必要かと言えば、相続手続きに必要な戸籍謄本等によって、
法定相続人全員と、それぞれの法定相続分を、
金融機関などの第三者にも証明できることになるからです。
そして、仮払い制度を利用した場合の払い戻し金額でも、
「亡くなった方の預貯金額×請求する相続人の法定相続分×3分の1」
のように、法定相続分を計算する必要があるからです。
つまり、仮払い制度を利用する場合でも、
事前に相続手続きに必要な戸籍謄本等が必要ということです。

②次に、金融機関に仮払い請求をする相続人の法定相続分を、
相続手続きに必要な戸籍謄本等の内容から計算します。
亡くなった方の配偶者と子供が法定相続人の場合は、
配偶者の法定相続分は2分の1、
子供全員の法定相続分は2分の1となります。
子供が数人いる場合には、2分の1の法定相続分を、
子供の人数で割った割合が法定相続分となります。
もし、亡くなった方に配偶者がいなくて子供がいる場合には、
子供の人数で割った割合が、子供1人の法定相続分となります。
亡くなった方に配偶者も子供もいなくて、
両親も祖父母も亡くなっていれば、
亡くなった方の兄弟姉妹が法定相続人になります。
兄弟姉妹の法定相続分は、
兄弟姉妹の人数で割った割合となります。

③戸籍謄本等がそろい、法定相続分も計算できれば、
亡くなった方の口座のある金融機関に対して仮払いの請求の手続きを行います。
仮払いの請求用紙については、
各金融機関で用意している用紙に、
必要事項を記入することになります。
手続きに必要な書類としては、
各金融機関ごとに多少の違いがありますが、
相続手続きに必要な戸籍謄本等の原本一式については同じです。
なお、仮払いを請求する相続人の印鑑証明書についても、
本人確認などのために必要になることが多いです。
しかし、その他の相続人の署名や押印、
印鑑証明書については特に必要ありません。

④仮払いの請求に必要な書類の審査が行われ、書類の不備不足がなければ、
通常、約10日~2週間前後で支払いが行われます。
以上が、裁判手続きをしないで、
仮払い制度を利用して、
口座凍結中に支払ってもらう大まかな流れです。
この方法のメリットとしては、相続人全員の署名や押印が必要なく、
裁判の手続きを行う必要もないことと、
葬儀費用やその他の急な支出にあてることができることです。
デメリットとしては、支払いの上限が決まっていることです。
仮払い制度で口座凍結中に家庭裁判所の手続きによって引き出す方法
この方法は、家庭裁判所に遺産分割の審判、
または、調停を申し立てた上で、
亡くなった方の預貯金の仮払いを申し立てる方法です。
ただ、この方法は、亡くなった方の債務などの支払いのためなど、
仮払いの必要性が認められる必要があります。
そして、仮払いの必要性が認められれば、
亡くなった方の預貯金の全部または一部を、
仮に支払わせるということになります。
この方法の場合、仮払いの上限は決められていませんので、
裁判所が必要と判断する金額を受け取ることも可能です。
そのため、この方法のメリットとしては、
裁判所が認めれば、全額を引き出すことができることです。
デメリットとしては、裁判手続きに手間と時間がかかることです。