祭祀財産とは、被相続人(亡くなった人)が残した財産の内、
仏壇、仏具、位牌、お墓など「先祖をまつるための財産」のことです。
祭祀財産は、相続財産には含まれず、
相続財産とは区別して継承する人を決めることになっています。
ただ、祭祀財産には「具体的にどんなものがあって」、
「誰が継承するものなのか」などよくわからない、
という人も多いのではないでしょうか?
そこで、祭祀財産の具体例や継承者などについて、
実際に相続手続き業務を行っている行政書士が解説致します。
行政書士・土地家屋調査士 寺岡 孝幸(てらおか たかゆき)
保有資格:行政書士、土地家屋調査士。
取扱い分野:相続関連手続き全般。
経歴:開業以来17年間、相続手続きに関する業務を全国対応で行っています。
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祭祀財産とは具体的にどんなもの?
祭祀財産には、具体的に次のようなものがあります。
- 系譜(けいふ)・・・家系図や過去帳など先祖の系統を示したもの
- 祭具(さいぐ)・・・仏壇仏具や位牌、神棚など祭祀のために使うもの
- 墳墓(ふんぼ)・・・墓石や墓碑、墓地など
これら祭祀財産は、相続財産とは違い”遺産分割の対象外”で、
相続税もかからない”非課税財産”となります。
そして、祭祀財産は、分割して複数の人が継承するのではなく、
原則として1人の人がすべてまとめて継承することになっています。
祭祀財産は誰が継承する?祭祀承継者は?
祭祀財産を継承する人のことを、
祭祀承継者(さいししょうけいしゃ)といいます。
祭祀承継者については、民法第897条で次のように定められています。
民法第八百九十七条
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
引用元:民法 | e-Gov法令検索.「民法 」. (参照 2023-4-4)
つまり、祭祀承継者は、次の順番で決まるということです。
- 被相続人に遺言で指定された人や、生前に口頭で指定された人
- 被相続人の指定が無い場合、慣習をもとに遺族の協議で決める
- 慣習が明らかでない場合、家庭裁判所の調停又は審判で決める
1つずつ解説していきます。
① 被相続人に遺言で指定された人や、生前に口頭で指定された人
一般的に、長男が祭祀承継者になると考える人も多いですが、
民法では、そのような定めはありません。
配偶者や長男など相続人も祭祀承継者になれますし、
相続人以外でも、親友や内縁の妻などもなれます。
そして、被相続人が祭祀承継者を「遺言で指定した場合」も、
「生前に口頭で指定した場合」も、相手の承諾は必要ありません。
② 被相続人の指定が無い場合、慣習をもとに遺族の協議で決める。
被相続人による祭祀承継者の指定が無い場合は、
相続人又は遺族の協議で決めるのが実状です。
相続人の協議ができない場合には、
「慣習に従って祖先の祭祀を主催すべき者」が継承します。
③ 慣習が明らかでない場合、家庭裁判所の調停又は審判で決める。
祭祀承継者は祭祀財産を放棄できる?
祭祀承継者は、祭祀財産を放棄することはできませんが、
引き継いだ祭祀財産を処分することはできます。
また、祭祀を行わなければならないといった義務はありません。
相続放棄しても祭祀財産は承継できる?
祭祀財産は相続財産ではありませんので、
相続人が相続放棄をしたとしても、
その相続人が祭祀財産を継承することは可能です。
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